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危険な眠気 世間の皆さんは基本的に眠ることが好きであるようだが、私は逆に眠るのが嫌いである。出来ることなら一生眠りたくない。特に雪山で遭難中の時は寝たくないし、その他運転中、プールの中、ライオンの目の前、像の足の下など、寝たくない場面は非常に多い。 それに比べて私が寝てもいいと思う時はわずかに、眠気があって安全なときのみである。このことからも私がいかに睡眠が嫌いかわかっていただけたと思うが、にもかかわらず最近、やたらと睡眠をとるようになってしまった。時々耐え難く眠くなってしまうのだ。 しかもその状況が不自然なのである。どうもおかしい。その状況を以下に記そうと思う。 例えば、起きたら教室で一人で寝ていた、ということがある。 いったい何が起きたのか。まだ昼過ぎだったはずだが。そう思って時計を見ると5時を回っていたのには驚いた。そんなに長く眠っていたとは考えにくい。なぜならばまだまだ眠いからだ。ひょっとすると、眠っている間に時間の流れ方が変わったのかもしれないと思い、時計の針の進み方を観察したが正常に動いているように見える。そんな馬鹿な。 誰かに睡眠薬を一服盛られたのかも知れないという疑いが、この時初めて私の心の中に頭をもたげた。 しかし私は格好は良いし、頭も良いし、裕福だしで、恨まれる理由が全く思い浮かばない。だからこの時は、きっと知らないうちに疲れていて眠ってしまったんだと思い、無理に納得することにしたのだ。 しかし、また事件は起こった。 私が学校をさぼり、一人で海岸を歩いていたときのことだ。 体の火照りと異常な喉の渇きを覚えて目覚めると、なぜか真夏の海岸のブロックの上で寝ている自分を発見したのだ。 驚きである。なんでこのくそ暑い時期にこんな熱いところで寝ていたのか、自分でもさっぱり解らない。日陰など全く無いし、夏の直射日光でブロックはもはや卵が焼けそうなほど熱くなっている。一歩間違えば死ぬところである。現にその時、異常な口渇感と喉の痛みを感じていたのは、熱射病の一歩手前であったことをうかがわせる。っていうか、こんなところでよく眠れたな。 これはもはや疑う余地があるまい。 私は誰かに狙われている。 しかもその行為はエスカレートしてきている。初めは教室だったのに、今回はこんな危険なとこで眠らすなんて。これは単なる脅しというよりは、実際に命を奪おうとしている可能性が高い。 恐らく犯人は、私を愛するあまり殺して自分だけの物にしようとする熱狂的女性ファンであろう。しかし、私は皆のアイドルであり続けるためにも、ここで死ぬわけにはいかないのだ。戦うしかない! そう決意を固めた私は戦いに備えて力を蓄えるため、ポカリで水分補給をしたが、思えばこれに睡眠薬が仕込まれてあったような気がする。なぜならその直後に眠気が押し寄せ、そのままもう一眠りしてしまったからだ。 それからも犯人の手によっていろいろな場所で眠らされたが、ある時、ついに犯人が本気で私の命をとりに来たのだ。 まさか、こんな危険なところで眠らされるとは思わなかった。奴は完全に私の命を奪う気らしい。 そう、運転中である。 海岸事件以来、私は飲み物や食べ物に薬を盛られないように、細心の注意を払ってきた。しかし、その時はどうしても注意を払う余裕がなかったのである。 だがしかしそれは人間である以上、しょうがないと言える。だれだって四六時中気を張り続けられるはずがないのだ。無理に決まっている。特に徹夜でゲームに熱中している場合など、一体どうやって注意していれば良いというのか。 が、敵はまさにそこをついてきたのだ。 人は何かに夢中になっているとき無防備になるから、そこを突かれたというわけだ。これを卑劣といわずして何と言う。 一服盛られたことに気付かない私は、遊び終えて帰るために車に乗り込んだ(am5:00)。そして目を覚ましてみて驚いた。 エ、エアバックが開いてる!? 一体何が起こっているのか。助手席を見ると、こちらもきちんと作動している。良かった良かった。いや、良くない。 目を上げるとフロントガラスがえらいことになっている。亀裂がはしり、一部穴が開いている。そしてボンネットに目をやると、なんかガードレールが突き刺さっているではないか。あれ、おまけに私の頭部から赤いものが滴り落ちてるよ☆ まさか車まで破壊するとは、犯人は実は体格のいい男だったのか、などと新事実に驚きつつも、とりあえず警察と救急車を呼んでみた。なにか犯人が物証を残しているかもしれないからだ。 そして警察が来てくれました。 私 「すいません、ちょっと居眠りしてしまってる内に…」 警察「いやー、すごいね、大丈夫だった?」 私 「ええ、なんとか…。犯人は車だけで満足したようですね。」 警察「……。これ、普通は死んでるよ。エアバックのおかげだよ」 私 「最近のエアバックは暴漢からも身を守ってくれるんですか?」 警察「……。君どっか怪我して無い?頭とか。」 私 「ええ、そうなんです、頭をちょっと打ってるみたいです」 警察「どうりで。あ、救急車来たね。じゃあ免許証見せて。行って良いよ。」 このような会話がなされ私は病院へ搬送された。幸いにも頭に(事故による後天的な)異常は無かったが、車は完全にお釈迦である。新車だったのに。ターボ付いてたのに。こんなひどい犯罪がまかり通っていいのか。 しかも、それ以降も犯人が捕まることは無かった。全く、これでも世界で治安が最も良いといわれる日本なのかと、憤りを隠せない。 もはや日本警察が信じられなくなった私はそれ以降、自分の身は自分で守ることに決め、徹夜で何かに熱中することはやめた。するとやはり隙がなくなったのであろう、睡眠薬を盛られることも無くなり、無事今まで生き延びているのである。 人間どこで人の恨みを買っているかわかったものではない。ですから皆さんも徹夜明けに車など運転しないよう、気をつけていただきたい。 トップへ |